何かを売るにはそれを見せなくてはなりません。それを欲しいと思わせなくてはなりません。
見せるためにはよく見える場所に置く、欲しいと思わせるには綺麗だとか、カッコイイだとか いやされるだとか、面白いだとか、効果的だとか、モビールとそれが置かれている状況や マッチングに説得力がなくてはなりません。よく見える場所とは人がよく集まる場所であり
他に見るものがない場所であり、しばらくはそこに止どまらざるをえない場所のことです。
欲しいと思わせるカッコヨサやマッチングのよさは、何もない茶室のシンプルな雀とか 食卓を彩るユーモラスな蛙とか、逃げ場のないトイレや待合室のエンヂェルとか、 動きのないショーウィンドーのオランウータンとか、ちょっと意外でちょっと控え目な
画龍に対する点睛みたいなもののことです。
街でよく目につく場所といえば各種の専門店やスーパーやデパート、喫茶店、レストラン、役所、 病院、ゴルフ場、バスやタクシー等を思い浮かべます。口数の少ないマスターの肩越しに見える カモメのモビールに男の美学を感じたり、清楚なママさんがキーピングボトルを背にしてゆるやかに 舞うペガサスと並んでいたりすれば、それを見た人は自分も欲しいと思うかも知れません。 喫茶店で一人苦いコーヒーを飲んでいる時など、カワセミのモビールが揺れていれば目のやり場に
困ることもありません。
街はそのままモビールの展示場です。それを見た人がいいと思ってくれさえすれば、彼も彼女も 無給の営業マンです。展示場に商品が充満し無数の営業マンが活発に働いていて、成績の 上がらないわけはないのです。とは言うものの、どうすればそんな状況をつくり出すことが出来る のでしょうか。鍵は“お店”にあります。国や地域を問わず、規模や業種を問わず、お店は間違いなく 人の集まる場所です。そしてお店は間違いなく人を集めようとしています。動く物を追うように進化 してきた人間の目は、モビールに反応せずにはいられません。モビールはお店と協力して集客に
貢献しなくてはなりません。集客に貢献出来るだけの魅力的な小道具でなくてはならないのです。
── モビールを売る ──
モビールのある風景 “呉服屋のオランウータン” “モビールのスーパー” |
もう一ツの鍵は安らぎ感にあります。役所や病院や警察は、多くの人達が出入りする日常的な場所で ありながら、しかもお気軽にとか遠慮なくとか親しまれるとか言いながら、申し合わせでもしたかのように ある種の緊張感を漂わせています。本当に親しまれたいのなら、モビールはポスターや広報紙以上に
効果的です。
モビールのある風景 “市長のモビール” “歯医者に行く男” “警察のフクロウ” |
問題はそれを如何にしてご当人達にわからせるか、ということです。テレビであれインターネットで あれ、あらゆる媒体を総動員して情報提供すればいいのですが、媒体である彼等をその気に させるには、街のいたる所でモビールがその役割を果たしている現実を見せるのが最も効果的な 方法です。需要と供給みたいな話で、これも鶏と卵論争になってしまいそうです。 大変な仕事ですがその後には大変な報酬が待っているのですから、やってみる値打ちはある、と
思いますよ。
何度も繰り返してきたように状況が作り手を育て、流通や販売に従事する業者を育て、更なる需要を 育みます。そうなるまでは誰も自分の手を汚そうとはしませんし、そうなれば誰もが一斉に報酬を 求めて群がります。だからこそ、ずるくて賢くて臆病な普通の人よりも、変人だとか馬鹿だとか
いわれても屈しない慾張りで野心的なロマンチストの登場が待たれているのです。