玄関のドアーを開けると、目の前にカモメのモビールが 揺れている。吹き抜けの二階から糸をつないでぶら下げた 10羽のカモメがドアーの開閉にともなう風を受け、三坪ほど
しかないわが家の大空に精一杯大きな輪を描く。
子供だましのつもりで買ってきた繭のカモメは今やわが家の 代名詞になってしまった。女房からは、下駄箱の上の生花を 見てくれる人がいなくなってしまった、と責められるが
こればかりは、ごめんね、かんにんな、としか言いようがない。
来宅する 友人・知人からおだてられると、ついついその気になって 今では、小さなライトをとりつけ照明を当てたりして楽しんでいる。 真夜中の玄関に一人膝小僧を抱きながらカモメを見上げるオジサンは
無気味だろうか、それともかわいいだろうか。